7月19日から20日にかけての撮影分です。まずは19日分から。
先日の記事にて取り上げた「GV・SLぐんま横川」と「GV・SLぐんま桐生」。砕石輸送気動車GV-E197系が営業列車を牽引するという、事業用車両の歴史を変える一大プロジェクトです。
2024年5月14日から始まった上越線での12系牽引試運転を皮切りに、同年12月からは信越線・両毛線で営業運転を見据えたSL・DL・ELとのプッシュプル方式による試運転が繰り返し行われてきました。7月3日には営業運転開始に先立って関係者向けの試乗会が行われ、初めて乗客を乗せた状態で高崎~横川間を往復。そして7月19日、遂に営業運転の初日を迎えたのでした。
初日となる19日から始まる3連休は、19・20日が信越線の「GV・SLぐんま横川」、21日に両毛線の「GV・SLぐんま桐生」の運転が設定されました。これまで新型事業用車たちの動向を見守ってきた身として、この歴史的瞬間を見逃すわけにはいかず3日間の全通が決定。大阪から呼びつけた友人1名と合流し、気合十分で朝の高崎線を下っていきました。このあと惨劇が起こるとは知りもせず…。
高崎到着後は荷物をロッカーにぶん投げまして、高崎アリーナへ。

少し早めに到着したので電留線の様子を観察。キヤE195系、出区待ちのE231系、そしてスハフ32 2353が1両だけ留め置かれていました。

程なくして、本日の主役が姿を現しました。

※入換 GV-E197系TS08編成+D51 498 高崎
GV-E197系がD51 498を牽引して登場。前面にはヘッドマークが取り付けられています。初の営業列車牽引の大役を担うのは最終増備車のTS08編成です。
牽引車GV-E197とホッパ車GV-E196から成る砕石輸送気動車GV-E197系ですが、最後に登場したTS08編成は中間にGV-E196を挟まず牽引車のみで落成しました。200番台に区分されるこの編成の最大の特徴は「自動ブレーキ車による被けん引に対応するための可搬式読替装置を搭載可能」となっている点です。
現代の鉄道車両で主流となっているブレーキ方式は電気指令式ブレーキで、GV-E197系も例外なく電気指令式空気ブレーキを採用しています。一方で高崎エリアに残る機関車や客車は自動空気ブレーキという、一昔前のブレーキ方式が使用されています。
GV-E197系は砕石輸送以外にも牽引車としての使用も想定されており、先に登場したTS01~TS07編成についても自動ブレーキ方式の客車等を「牽引すること」自体は可能となっています。しかしながら、自動ブレーキ車による「被けん引」、平たく言えばプッシュプル運転の後ろ側にくっつく場合には、自動空気ブレーキ車の空気圧によるブレーキ作用を電気指令に読み替える機能がなければGV-E197側のブレーキを動作させることができません。この読み替えを可能とし、GV-E197系とSLのプッシュプル運転を実現させたのが最終増備車のTS08編成というわけで、現在のところ「ぐんま横川」「ぐんま桐生」に使用できるGV-E197はこの編成のみとなっています。

話を戻しまして、入換の後撃ち。SL側にもヘッドマークが取り付けられています。この入換の場面は光線があまりよろしくないので、曇ってくれてラッキーでした。
続いて線路の反対側へ移動。

電留線の脇にやって来ました。電留5番線に入ったTS08+D51 498。すぐにD51が切り離されまして、入換線で折り返して電留8番線へ。12系を引っ張り出して再び電留5番線に戻ってきます。

D51が戻ってくるまでの間にGV-E197系とキヤE195系の並びを。キヤの方はST-20編成、前日の午後便で発送された竹沢工臨です。昨日の夜に八高線に入りまして竹沢駅でレール取卸しを行い高麗川で折り返し、未明に高崎に戻ってきまして、午後の返却までここに留置となります。新型事業用車の後輩たるTS08の晴れ舞台を見守るかのような演出に朝から涙が止まりませんでした。

しばらくしてD51が12系を連れて戻って来ました。推進で電留5番線に押し込んでいきます。

今回連結されている客車は3両。GV+PC+SLの形態で運転される「GV・SLぐんま横川」「GV・SLぐんま桐生」については3両編成が基本となるようです。昨年行われた上越線内での試運転では12系5両を牽引した実績がありますが、客車の後ろにSLを連結した上に乗客を乗せた状態で最大25‰の上り勾配がある信越線を走らせるには、3両が適当と判断されたようです。
国鉄電機を置き換えるという立場から、オタクからの評判があまりよろしくない部分のある新型事業用車たち。今回のぐんま横川・ぐんま桐生の運転に際しても「客車3両しか牽けないのか」「非力」「やはり失敗作」等々、まあまあな袋叩きに逢っていたのは言うまでもありません。ただ、個人的な思いを述べさせていただくのであれば、GV-E197系の本来の用途はあくまでも砕石輸送であり、最低限求められるのは砕石を満載にしたGV-E196系4両を満足に牽ける程度の性能だと考えられます。その傍らでSLの補助機関車としての用途に充てようとした結果、12系3両程度の連結が適当だと判断されたまでで、何も最初から機関車並みの性能を目指して作ったわけでもない車両に対し「失敗作」の烙印を押すのはいかがなものかと思うところです。

まあそんな話はさておき、組成作業が進んでいきます。推進で電留5番線に入ってきたD51と12系はこの位置で停車。

続いてGVが動き出し、12系と連結。

これで組成が完了。これが信越本線・両毛線でこの先運転される客車列車の新しいスタイルとなります。

ちなみにD51の方のヘッドマークは列車名が「SL・GVぐんま横川」になっています。SLとGV、列車名の頭にある方が牽引する車両になるとのことで、「ぐんま横川」については往路がGV先頭なので「GV・SL」、復路はSLが先頭なので「SL・GV」の列車名となります。両毛線で運転される「ぐんま桐生」は往路がSLなので逆になるというわけです。
さて、一通り入換も撮影できたところで駅に戻ります。いよいよ本日のメインイベント、「GV・SLぐんま横川」の一番列車に乗車します。

ホームに入りまして1番列車の入線を待ちます。電光掲示板にも「快速GV・SLぐんま横川」の文字が表示されていました。

程なくして本日の主役が2番線に入線。事業用車両の歴史が動く瞬間を目の当たりにするべく(?)大勢のギャラリーが高崎駅へ駆けつけました。

出発前の2番ホームはお祭りムード。先日の記事で紹介したフラッグも多数見られました。

前回乗ったときは入線から発車まで割と慌ただしかった印象がありますが、この日は遅れている上越線からの接続で発車が遅れる旨の放送があり、のんびり撮影することができました。

側面幕は「横川」単体。「SLぐんまよこかわ」の幕は収録されていますが、GV表記の幕は用意されていないようです。これはこれでなかなかアツいですね。
さて、遅れていた上越線からの電車も到着しまして、「GV・SLぐんま横川」の1番列車は約11分遅れで高崎駅を発車。ホーム上では出発式も開催され、高崎支社長・群馬県知事・高崎市長、そしてこの日から始まった「ぐんまちゃん高崎駅ジャック」キャンペーンの一環で駅長に委嘱されたぐんまちゃんに見送られ、高崎駅を発っていきました…、が、このとき既に惨劇が起きていたのです。
高崎駅発車時の車両からの様子 pic.twitter.com/kbTW0czArR
— あまぎ (@AmagiOm08) 2025年7月23日
こちらが高崎駅発車時の車内からの様子。0:17~あたりから起動を試みていますが、連結器の伸び切ったところで停車してしまい発車できず。そして0:33~から再び起動を試みて何とか引き出しに成功し、高崎駅を進出していきました。
このとき何が起きていたのかというと、最後部に連結されていたD51のブレーキが緩解していなかったのです。X(旧Twitter)に投稿された動画にはD51の動輪が動いていないまま引きずられていく衝撃的な光景が収められていました。
そんな状態で正常に運転が継続できるはずもなく、北高崎~群馬八幡間で車両点検のため停車。この時はまだ事態を把握していなかったのですぐに動き出すかと思っていましたが一向に運転を再開する気配がなく、とうとう信越線全線運転見合わせ・再開未定の運行情報が出る事態に。最初は「遅れれば遅れるほど乗車時間が延びるのでオトク」などの謎理論で楽観視していましたが、ここまでくるとそんなアホなことも言っていられません。結局車両点検は50分ほど行われまして、ようやく次の停車駅の安中駅まで速度を落として運転する旨の車内放送が流れました。

ということで急いで12系とGVの連結面へ。乗車するにあたってどうしても撮影しておきたいカット、なんとか撮ることができました。一安心して振り返ると車内がざわつき始めています。何事かと思いつつ座席に戻ると友人より「安中で打切り」の報が告げられました。

高崎駅発車から約1時間と12分、「GV・SLぐんま横川」1番列車は安中駅に到着。これにて運転打切りとなりました。D51の状態から運転継続は不能と判断されたようです。波乱の営業運転初日となってしまいました。隣に停車しているのは安中駅10:29発の136M。「ぐんま横川」の乗客が高崎方面に戻るための救済列車として抑止されていたようです。ホームでは高崎行き発車後は当面の間列車が来ない旨の案内が繰り返し行われていました。

そのまま高崎方面に戻ってもよかったのですが、この先の予定が詰まっているわけでもないのでとりあえず駅に居残り。ホーム上の人が少なくなってきたところでD51を観察します。

GV営業運転にあわせて用意された「GV」表記入りのヘッドマーク。碓氷峠の廃線ウォークとEF63のデザインです。これには秋田県から戦況を見つめていた碓氷峠マニア氏も「すばらしいね」とのコメントを残しています。

そして恐る恐る車輪を見てみると、こんな状態になっていました。素人なので詳しいことはわかりませんが、盛大に傷が入ってしまったようです。

客車の方は既に回送幕になっていまいた。しばらく安中駅に停車していのかと思いきや、11:57頃に下り本線逆出発にて高崎へ回送されたようです。
自分たちは横川駅行きの代行バスの手配ができたとの案内があったため乗車。D51の回送より一足早く安中駅を去っていました。D51の発車をもって信越線も運転再開となり、結局横川駅には後続の普通列車とほぼ同着になりましたが、涼しい車内でかつクロスシートで移動できたのでたいへんにありがたかったです。
横川到着後はおぎのやドライブインで昼食。ぐんま横川の打切りの影響もあってか、3連休初日の割には店内が空いていた気がします。

137M 普通 横川 211系A60編成 横川
駅に戻るとちょうど「ぐんまちゃん高崎駅ジャック」のヘッドマークを付けたA60編成が来たので撮影。これに乗って高崎へと戻りました。
高崎からはレンタカーに乗り換えまして関越道を北上。

工9733D 上沼垂工臨 キヤE195系ST-23+ST-18+ST-15編成 越後湯沢~石打
午前発送の上沼垂工臨を。事故渋滞で撮影地の選択肢がだいぶ限られていたのでガーラ湯沢の駅舎バックに行ってみました。今回は3編成での運転。越後川口行きを新潟タ行きで挟む珍しい組成でした。
ということでこの日の撮影はこれにて終了。高崎に戻って居酒屋で反省会です。
反省会中に高崎支社より20日以降の「SLぐんま」の運転計画についての発表があり、
7月20日「ぐんま横川」:通常通りの運転(牽引機をC61に変更)
7月21日「ぐんま桐生」:運休
という形になりました。
信越線ではC61とGV-E197系による試運転を行っており安全上の確認がとれたため運転が可能ですが、両毛線ではC61による試運転を行っていないため運休という判断になったようです。この発表でD51がしばらく復帰できないことが暗に示されており、「GV・SLぐんま桐生」の1番列車の運行は当面お預けとなってしまったのでした。
つづく。