前回の記事の続きです。長々と書いてきました名古屋編、これがラストになります。
あっという間に迎えた名古屋旅行最終日。最終日は兼ねてから行きたかった場所を訪問して参りました。金山駅から地下鉄名港線に揺られること十数分、終点の1つ手前の築地口駅で降りまして…、
やって来たのは名古屋港駅、JR貨物名古屋港線の終着駅です。名古屋資材センターが併設されており、JR東海における定尺レール輸送の拠点となっています。
名古屋と名古屋港を結ぶ貨物線として開業した名古屋港線(なごやみなとせん)。開業は1911年で、名古屋港周辺の貨物線で最も長い歴史を持つ路線です。かつては名古屋駅と名古屋港の間の貨物輸送を担っていましたが、国鉄の貨物輸送衰退によって貨物列車の運行は減少していき、現在はJR東海向けのレール輸送にのみ使用される路線となっています。かつては貨物線として栄えたレール輸送専用路線、越中島貨物線とよく似ていますね。
JR東海におけるレール輸送の拠点の1つであることには間違いないのですが、ここから発送されるのは全て25mの定尺レール。一方のロングレールは浜松レールセンターから発送されています。そのため、駅の敷地こそ広大ながらもレール積み込み等の設備はコンパクトにまとめられています。
こちらは出荷待ちのレール置き場。3本1セットでまとめられています。積み込み用のクレーンはなく、奥にある山越器を使用して積み込みを行うものと思われます。
その脇に留置されているのはキヤ97系R4編成。JR東海のレール輸送用気動車です。定尺レール輸送用のキヤ97系は4編成(R1~R4)在籍しており、所属先の名古屋車両区から必要に応じて名古屋港駅に送り込まれるという運用形態になっています。この他にも長尺レール輸送用のR101編成が存在しますが、当然この名古屋港駅にはやって来ません。
かつては他のJRグループ各社と同様に機関車とチキ車によるレール輸送を行っていたJR東海ですが、技術継承の問題や運用の煩雑さなど諸々の問題を解消すべく今から約14年前の2008年に気動車方式への移行に踏み切ります。その結果、JRグループで真っ先に機関車を全廃することに成功しました。
それから13年が経過し、ご存知の通りJR東日本がレール輸送用新型気動車キヤE195系を導入。JR東日本の2017年9月5日付のプレスリリース(「東北地区へのレール輸送用新型気動車の投入について」)にもキヤ97系をベースとした車両であることが明記されており、これはJR東海におけるレール輸送の気動車方式への移行が成功を収めた揺ぎ無い証拠である言えるでしょう。
また、必要に応じて所属先からキヤを送り込んで積み込み後に各地へ輸送、返空列車は所属先に直接返却されるという運行形態もJR東日本で採用されており、この点からもJR東海はレール輸送の新しい形を確立したパイオニア的存在であることがわかります。
そんなJR東海の定尺レール輸送ですが、JR東日本と決定的に違う点が1つあります。それは名古屋港線内の運行形態。キヤ97系の自走ではなく、JR貨物の機関車の牽引で運行されています。
越中島貨物線はJR東日本が第一種事業者であり、キヤE195系の自走が可能となっていますが、この名古屋港線はJR貨物所有の路線ということで、キヤ97系による自走運転は行われていません。ただ、検測車キヤ95系に関しては名古屋港線内を自走しているということで、これがどういう理屈なのかは少し気になるところです。
8660 DD200-15 名古屋港
ということで、稲沢からの8660列車が名古屋港駅に到着。この日は名古屋港への送り込みはなく、単機でやって来ました。この日の牽引機は愛知機関区のDD200-15。HD300のような見た目ですが、こちらはバリバリ本線を走行できるJR貨物の最新鋭電気式ディーゼル機関車です。かつては愛知機関区のDE10が幅を利かせていたようですが、2020年11月頃からDD200が名古屋港線へ入線するようになり、現在ではDE10の姿はほとんど見られなくなりました。
程なくして入換がスタート。手前の引上線まで入線して…、
R4編成の留置されている線路へ。
連結して、R4編成を引き出してきます。
積車状態は初撮影となったキヤ97系。顔はキヤE195系とそっくりですが、ラインカラーが違うのはもちろん、運転台上部の保守用車標識灯がないほか、積付具が黄色だったりといった差異が見られます。
荷票も確認することができました。特大貨物検査票の書式自体は同じですが、全て手書きではなく印刷済みであったり専用の判子が押されている部分があります。また、輸送番号や行き先が書いていないため、この時点ではどこ行きのレール輸送なのかはわかりません。
そして引上線から推進で着発線へ。赤い機関車と黄色い貨車、なかなかいい組み合わせですね。
国道23号線の奥まで押し込んでキヤを切り離し、機関車は再び引上線へ。
右側の線路を通って先程とは反対側に連結されまして、名古屋を目指します。
これが8660列車到着から8661列車組成までの流れになります。レールセンター内も自力で動くキヤE195系とはまた違った魅力がありますね。ぜひまた訪れたいものです。
さて、この後は名古屋港周辺を散策。まずは名古屋港ガーデン埠頭にある名古屋港水族館へ。
見どころは色々あるわけですが、注目はこのコウテイペンギン。ペンギンを展示している水族館は多いですが、このコウテイペンギンを展示しているのは和歌山のアドベンチャーワールドとこの名古屋港水族館の2箇所のみ。たいへんに貴重です。
このふてぶてしい態度 堂々たる佇まい。「皇帝」の名に相応しいペンギンです。たまに目線くれて嬉しかったです。
広大な敷地と充実した展示、周囲の景色も相俟って、いい施設だなという印象を受けました。名古屋港線とセットで押さえておきたいスポットです。
続いて水族館の隣に聳え立つ名古屋港ポートビルへ。ここでの目当ては2箇所、まずは7階の展望室へ。
名古屋港ガーデンふ頭の景色を一望することができます。名古屋港水族館と中部地区最大級の大観覧車が聳える名古屋港シートレインランド、手前の船は南極観測船「ふじ」です。
名古屋港駅は建物の陰でしたが、名古屋港線の線路は少しだけ見えました。背後には名古屋駅周辺のビル群が見えます。
続いては3・4階の名古屋海洋博物館へ。何を展示しているのかもよく調べずにとりあえず行ってみたのですが…、
入館するといきなり名古屋港周辺の巨大ジオラマがお出迎え。超デカいですし、超よくできています。どのくらいよくできているのかと言うと…、
名古屋港駅の配線まで再現されています。すごすぎる。
一般的に「名古屋港」と呼ばれているのはこの日散策したガーデンふ頭周辺ですが、正確には全12のふ頭とフェリーターミナルが「名古屋港」となっているようで、ジオラマがここまで巨大になるのも納得です。
前日に訪れた金城ふ頭もしっかりと再現されています。名港中央大橋の再現度も凄まじいです。
この巨大ジオラマの向かい側には自働化コンテナターミナルの模型があり、ボタンを押すことでコンテナの積み降ろしができます。4072列車でよく見かけるようなコンテナが大量に積まれていて、これを見るだけでも面白いです。
この他にも船の歴史やシミュレータがありまして、名古屋港水族館に負けないくらい充実した施設でした。行ってよかったです。
この後は南極観測船「ふじ」を散策して名古屋港から撤収。まだまだ見たいところはたくさんありましたが、新幹線で名古屋を後にしました。
ということで、5記事にわたって書いてきました名古屋編、これにて完結です。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。