前回の記事の続きです。
前日に世紀の名車オーシャンアローを撮影し既に新幹線代の元は取りましたが、ここからが本番です。前夜に合流した10年来の知人に叩き起こされまして、朝から大和路線へ。「撮りたいものを言わないと毎日大和路線だぞ」と脅されていましたが、本当にいきなり連行されるとは思いませんでした。
天王寺で大和路線に乗り換えまして、一気に高井田へ。乗車電は201系、関東人にとっては中央線や京葉線で馴染みの深い形式です。
1979年に試作車が登場し、1981年から量産が開始された201系。101系の老朽化とオイルショックを契機とした省エネ思想の高まりを背景に開発が行われ、次世代の標準型通勤電車として誕生しました。
機能面では省エネの観点から従来の抵抗制御に代わるサイリスタチョッパ制御や電力回生ブレーキを採用して注目を浴びたほか、前面をブラックフェイスとしてイメージアップを図るなど内外装にも新機軸が盛り込まれ、当時「通勤電車の決定版」と評されいていた103系の続番ではなく、新たに200番代のトップナンバーとして「201」の形式が与えられました。この200番代の系譜は最新鋭のE235系まで引き継がれており、次世代標準型通勤電車の祖と言える存在です。
中央快速線をはじめ、中央総武緩行線や関西地区の東海道本線へと導入されて期待通りの省エネ性能を発揮した一方、主制御器に用いる半導体のコストが下がらなかったことから量産は4年ほどで終了し、その後は大幅なコストダウンを実現した205系の量産へと移行していきました。
2000年代に入り、201系を取り巻く環境に変化が訪れます。まずは2000年のE231系導入を機に中央緩行線から撤退し、青梅・五日市線と京葉線へ転属。2006年には長らく独壇場となっていた中央快速線に当時最新鋭のE233系が導入され、2010年に中央快速線から全車両が引退。2011年に最後の活躍の場となっていた京葉線からも退き、首都圏では保留車クハ201-1を除く全車両が姿を消しました。
一方の関西地区では2003年から体質改善工事が行われ、2007年に東海道本線から撤退したものの、大阪環状線、桜島線、関西本線へと活躍の場を移し、2008年には新たに開業したおおさか東線での運用を開始。走る線区は変われど比較的最近まで全車両が在籍しており、関西地区で初めて廃車が発生したのは首都圏から同形式が姿を消した7年後、2018年のことでした。その後は2019年に大阪環状線から引退し、2022年にはおおさか東線からも撤退。活躍の場が狭まるとともに廃車も進行し、現在は吹田総合車両所奈良支所に6連5編成が残るのみとなりました。そして関西本線(通称 大和路線)のJR難波~王寺(奈良)間が、201系の走る最後の線区となったのです。
そんな201系に揺られて高井田で下車。まずは王寺からの折り返しを狙います。
1773K 普通 JR難波 201系ND604編成 高井田
久々の撮影となりました、201系です。関東人の201系に対する思いは2パターンあると考えていまして、姿や活躍の場が変わっても変わらず201系を追い求める者と、中央線で活躍する姿こそ至高であり関西圏の車両にはそこまで関心のない者です。私はどちらかというと後者の人間なのですが、やはりこの顔を見ると「アア、コレだよコレ」って思います。ちなみに10年来の知人はと言いますと圧倒的な前者で、自他ともに認める201系に人生を狂わされた男です。関西に転居後は毎週末のように大和路線に通っており、本人には絶対に言いませんがその熱意を心から尊敬しております。
1777K 普通 JR難波 201系ND607編成 高井田
30分空きまして、201系がもう1本やって来ました。大和路線での201系の運用は平休ともに朝夕3運用・日中2運用となっています。日中の大和路線はパターンダイヤなので、201系→大和路快速→なんか→大和路快速→201系の順に30分間隔で201系がやって来ます。
効率のいい反面、201系が全く来ない時間帯もあります。このまま1777Kに飛び乗りまして、一旦天王寺まで戻ります。
昼食を挟んで大阪阿部野橋のポポンデッタ視察および頭端式ホーム愛好会の活動を。時間の都合でこれ1本のみの撮影となりました。
1789K 普通 JR難波 201系ND604編成 平野
続いては知人が資料写真を撮りたいということで平野駅へ。既に同人誌を1冊執筆していますが、相変わらず研究には余念がないようです。
このND604編成は1988年2月に高槻電車区に新製配置され、2003年に体質改善工事を施工。2006年6月から2008年2月に大阪環状線で使用された実績があり、その間に一時的な編成の組み換えがあったものの、現在は新製時の編成からサハ1両を抜いた編成に戻されてND604編成として現在に至ります。
資料写真は無事に撮れたとのことで沿線に移動しまして…、
1793K 普通 JR難波 201系ND607編成 加美~平野
30分後の201系を。こちらはND607編成、1983年6月に明石電車区に新製配置されました。2006年3月から2007年8月にかけて4連化の上で大阪環状線で使用された実績があります。その後は一度外したモハ1ユニットを再度組み込んだ上で奈良電車区へ転属し、現在に至ります。
趣味者目線でのND607編成の特徴として挙げられるのが、加速時のいわゆるジェット音。「ヒュゴオオオオオ」っていうアレです。
【参考】
2022/5/23
— あまぎ (@AmagiOm08) 2024年1月19日
201系ND616編成
圧倒的ジェット音 pic.twitter.com/J6wMltbMRb
関東人にとっては 201系=ジェット音 というくらいに聞き馴染みのある音ですが、これはモーターのベアリングの劣化により発生するものであり、全ての201系がこの音を奏でるわけではありません。とりわけ加減速の激しかった中央線ではモーターに負荷がかかるため、末期はどの車両もこの音を爆音で鳴り響かせていたというわけです。近年では関西地区の車両も劣化が進んでジェット音を奏でる編成が現れ始めており、このND607編成もちょっと心配になるくらいのジェット音を響かせています。
さて、ここで一旦大和路線を離れます。「撮りたいものを言わないと毎日大和路線」というシステムなので、撮りたいものを提案すれば一時的に離脱することは可能です。
ということでやって来たのはOsaka Metro中央線。正式名称は高速電気軌道第4号線で、コスモスクエア駅~長田駅間を結んでいます。長田から先は近鉄けいはんな線に直通し、奈良県の学研奈良登美ヶ丘駅まで至る路線系統です。車両は近鉄と大阪メトロのものが使用されており、この7000系は近鉄の車両です。特徴として挙げられるのは衝撃的な警笛音。初めて聞いた時は笑いが止まりませんでした。
1504 コスモスクエア 400系406-13F 九条
ここでのお目当てはこの【超!エキサイティン!!】な車両、Osaka Metro400系です。宇宙船をイメージした外観は導入発表時に世間を騒然とさせましたが、2024年のローレル賞を受賞するなどそのデザインや先進性が高く評価されています。
他方で、一部のファンの間では前面の形状が1994年に発売された伝説の3Dアクションゲーム「バトルドーム」に似ていると話題に。偶然にも今年12月には本家「バトルドーム」の復刻販売も決定し、今後の動向から目が離せません。
早々に目的は達成できましたので、このまま中央線で森ノ宮まで移動。駅から少し歩きまして…、

やって来たのは森ノ宮電車区。ここには201系が2本疎開留置されています。1本目がこのND605編成。新製は1983年3月、ND604編成と同じく高槻電車区に配置されました。2006年9月から2007年2月という極めて短期間のみ8連化の上で大阪環状線で使用され、再び6連化されて奈良電車区へ転属し、現在に至っています。

前日に弁天町駅2番線のホームドア輸送に使用されたようで、知人曰く留置場所がいつもと違うとのこと。しかも通電状態で留置されていました。
続いてもう1本の201系の元へ。
ND602編成です。背後には大阪環状線と大阪城。森ノ宮電車区を感じさせる留置場所です。
現存する201系で最古参(保留車を除く)のND602編成。新製は1982年12月、高槻電車区の配置です。2006年3月から2007年10月まで4連化の上で大阪環状線で使用されて奈良電車区へ転属しています。
日も落ちてきたのでそろそろ撤退しようかと準備していたところ、突如201系が登場。ND605編成の入換が始まったようです。

※入換 201系ND605編成 森ノ宮電車区
ということで、留置線に戻ってくるところを。狙って撮れるものではないと思いますので、なかなかいい収穫でした。
ちなみのこのND605編成は10月21日に疎開返却されまして、現在は定期運用に復帰しています。
さて、緑色の電車を撮った後は緑色のお好み焼きと緑色の酒で乾杯。いい感じになったところで夜の部に突入です。
1834K 普通 王寺 201系ND607編成 天王寺
まずは天王寺でND607編成を。なんか既視感あるなあ…、って考えていたら10年くらい前にここでND614編成を撮っていたようです。
で、ここから201系に乗って大阪環状線の内側へ。
JR難波駅にやって来ました。名古屋駅から延びる関西本線の終着駅です。現在は大和路線の列車が発着するのみで、近接する私鉄の難波・大阪難波駅と比べると利用者の少ない駅です。しかしながら2031年には大阪環状線を南北に貫くなにわ筋線の開業が予定されており、近いうちにここJR難波駅から大阪駅に向かって線路が延びることになります。
そんなJR難波駅ですが、1日に数回201系の並ぶタイミングがあります。1番線にND604が滑り込んできました。
ホームを挟んでですが、201系の並びが見られました。左はND606編成、夜になり出庫してきた3運用目の201系です。
1983年3月に高槻電車区へ新製配置され、2006年5月~2007年12月は4連化され大阪環状線で活躍、その後6連化の上で奈良電車区へ転属しました。奈良に残る201系はどの編成も似たような経歴を辿ってきているようです。
で、そのND606編成に乗りまして今度は今宮へ。
回4216KB 225系HF***+HF427編成 今宮
ホームを移動して待っていると225系の回送が通過していきました。大和路線で使用される車両ではありませんが、天王寺駅の容量の関係で一旦JR難波まで逃げる回送列車が数本設定されているようです。
1862K 普通 王寺 201系ND604編成 今宮
程なくしてND604編成が入線。ここから新今宮駅に向けてカーブを描いており、首振り風のアングルで撮影ができます。
せっかくなので後撃ちも。上を走るのは大阪環状線内回りの線路です。
1841K 普通 JR難波 201系ND607編成 今宮
すぐさま反対ホームに移動しまして、ND607編成も撮影。レンズを変える暇がありませんでしたが、ぴったり収まってくれました。
折り返しを撮るべく再び天王寺へ。

1866K 普通 柏原 201系ND607編成 天王寺
阿部野区のシンボル あべのハルカスを入れてド広角で切り取ってみました。大阪南部の玄関口 天王寺を象徴する光景です。

JR難波方面へ向かう物体Aとともに。
この時間になると大和路線のパターンダイヤも崩れ、途中の柏原止まりの電車がちらほら走り始めます。
で、時間がちょうどよかったので…、

2085M 特急 くろしお35号 和歌山 283系HB601編成 天王寺
知人に懇願し、JR西日本が世界に誇る神電車 283系 Ocean Arrow も撮影させていただきました。23時を回ってだいぶあべのハルカスが暗くなってしまいましたので、そのうちリベンジできればなと。
入線だけ撮って足早にホームへ移動しまして、お隣の新今宮へ。この日の〆です。
1874K 普通 奈良 201系ND607編成 新今宮
先ほどのND607編成が柏原~JR難波と折り返して、奈良行きとしてやって来ました。現行ダイヤで奈良行きの201系は終電間際のこの1本のみとなっています。
この日はこれにて撤収。合間で撮りたいものを必死で考えましたが何も思いつかず、翌日も無事に大和路線連行が決定したのでした。
つづく。