2021年8月18日、田端運転所のEF65 1104が廃車のため長野へと旅立っていきました。田端PFの廃車は2015年11月の1118号機以来6年ぶり、長らく続いていた5機体制も終焉となりました。
今回はそんな1104号機の思い出を振り返っていきます。だいぶ長くなりそうなので、前編後編の2部形式とします。最後までお付き合いいただければ幸いです。
EF65 1104は、EF65-1000番台(PF形)の7次車にあたる機関車で、1978年9月13日に東京機関区へ新製配備されました。1978年から製造が開始された7次車は紀勢本線電化開業と旧型電機の置き換えを目的として製造されたグループで、下関運転所に4機(1092~1095号機)、東京機関区に21機(1096~1116号機)、新鶴見機関区に2機(1117・1118号機)が配備されました。
東京機関区と言えばブルートレインということで、東京機関区に配備された機関車は過酷な運用に耐え続けてきたEF65-500番台(P形)を置き換え、1104号機の誕生する少し前、1978年7月28日から寝台特急「はやぶさ」「富士」「あさかぜ」「みずほ」「さくら」「出雲」「瀬戸」の牽引機となりました。
ヘッドマークを掲げ、長大編成を率いて西へ東へ駆け抜けていく姿は、まさしく花形運用と呼ぶに相応しいものであったことでしょう。
しかしながら、東京発着ブルートレインのPF一強時代はそう長くは続きませんでした。1984年2月1日のダイヤ改正で寝台特急「紀伊」が廃止。東京機関区の仕業ではなかったものの、東京発着のブルートレインで初めて廃止となる列車が出てしまいました。
「紀伊」の廃止後は、同年の7月20日に寝台特急「さくら」に4人用個室「カルテット」を連結、翌年の1985年3月14日には寝台特急「はやぶさ」にロビーカーを連結するなど、既存列車へのテコ入れが図られました。しかしながら、ロビーカーを連結して15両編成となった「はやぶさ」をEF65-1000が牽引することは難しいと判断され、これを機に東京発着のブルートレインは「瀬戸」「出雲」を残し、全てが下関運転所のEF66の牽引に変更となりました。
また、同じく1985年3月14日のダイヤ改正で車両基地の大規模な統廃合が行われ、名門 東京機関区が廃止されます。これに伴い、EF65 1104は同僚と共に新鶴見機関区へと転属しました。旧東京機関区組は新鶴見機関区転属後も「瀬戸」「出雲」などの牽引を受け持っていましたが、国鉄分割民営化を見据えた1986年11月1日のダイヤ改正でPF形20機(1098~1116・1118号機)田端運転所へと転属し、1987年4月1日の国鉄分割民営化・JR東日本発足を迎えました。
JR東日本の機関車となってからは「瀬戸」「出雲」や寝台急行「銀河」のほか、当時全盛期であったジョイフルトレインの牽引、そして後にメインの仕業となるレール・バラスト工臨の牽引に従事してきました。
民営化直後は大きな動きこそなかったものの、田端運転所のPF形の運用は徐々に減少していきます。まず、1997年1月に「銀河」の間合いで牽引していた急行「ちくま」が電車化。翌年の1998年7月19日には寝台特急「出雲2・3号」と「瀬戸」が285系「サンライズ瀬戸・出雲」として電車化され、同運用から撤退。2000年3月11日には「出雲」の間合いで牽引していた寝台特急「彗星」が寝台特急「あかつき」と併結されることとなり、牽引機をEF66に変更。これで田端運転所のEF65が牽引する客車列車は「出雲」1往復と「銀河」のみとなりました。
その後、下関車両管理室のEF65が受け持っていた寝台特急「なは」が2005年10月1日より「あかつき」と併結されることとなり(「彗星」は廃止)、牽引機をEF66に変更。半年後の2006年3月17日には「出雲」が、さらに2年後の2008年3月15日に「銀河」が廃止となり、PF形の牽引する定期旅客列車は全廃となりました。
その後はご存知の通り、レール・バラスト工臨や乗務員訓練、貨車・客車等の回送要員に従事し、現在に至ります。
私自身が1104号機を初めて見かけたのは「銀河」の廃止よりもずっと後のこと。牽いていたものは青い寝台客車でもカラフルなジョイフルトレインでもなく、黒や黄色の貨車ばかりですが、今までに撮った写真とともに思い出を振り返っていこうと思います。
初めて1104号機を撮影したのは2014年8月27日のこと。配8937列車、通称「宇都宮配給」の牽引機として姿を現しました。
2014.8.27 配8937 EF65 1104+ホキ6車 川口
不定期運転となって久しい「宇都宮配給」ですが、この頃はまだ毎週のように運転がありました。また、配8937列車で下った機関車は宇都宮常駐機となり、翌週の配8936列車で帰ってくるという運用が組まれていました。
2015.3.7 工9862 東高島工臨返空 EF65 1104+チキ4車 西国分寺
2回目の撮影は約半年後の2015年3月、東高島工臨の返空でした。チキとの組み合わせはこれが初撮影。ちなみに内訳は大船と川崎でした。
2015.5.12 工9865 宇都宮タ工臨 EF65 1104+チキ12車 金町
チキとの組み合わせを初めて撮ってから2ヶ月、今度は積載チキとの組み合わせを初めて撮影できました。これでもかというほど埋められていた黄色い「ホチキス」が懐かしいです。今はタイガーロープになっていますね。ちなみに内訳は宇都宮タ×3・小山×2・黒磯でした。
2015.6.12 工9587 北府中工臨返空 EF65 1104+チキ2車 日野~豊田
こちらは宇都宮タ工臨のちょうど1ヶ月後に撮った北府中工臨返空。この日は189系の回送があり、いつもより1時間20分ほど遅く通過していきました。夏じゃなければ真っ暗でしたね…。
2015.6.19 工9865 高崎工臨(高南=1) EF65 1104+ロンチキC編成10車 金町
北府中工臨返空からちょうど1週間後、今度はロンチキとの組み合わせを初めて撮影しました。このあと何度も撮影することになる高崎ロング、この日は60Kレール2本のみの積載でした。
2015.8.1 工9774 新津工臨返空(新北=8) EF65 1104+ロンチキB編成10車 倉賀野
続いては8月1日の新津工臨返空。吾妻線70周年記念号を撮りに行くついでに撮ったものです。隣にいるPFは恐らく単8877だったと思います。
2015.9.10 工9872 八王子・飯山工臨返空 EF65 1104+チキ12車 東浦和
1104号機が牽いた工臨で印象に残っているものの1つがこちら。武蔵野線線路陥没の影響で6時間半ほど遅れて運転された八王子・飯山工臨返空です。終着の新小岩には7時間ほど遅れて到着し、貨車は翌日の工7281列車で越中島貨物へと返却されています。遅れていたのもそうなのですが、12車全てチキ5200形という編成美も印象に残っています。
夕方になっても武蔵野線のダイヤは乱れたままで、この列車も東浦和の本線にしばらく停車していました。
ちなみに、この3日前の9月7日に同僚のEF65 1106が秋田車両センターへと旅立っています。
2015.11.12 工9871 東神奈川工臨(浜南=16) EF65 1104+ロンチキA編成10車 金町
続いて横浜線現場の東神奈川工臨。50Nレールが11本、ギリギリ2段積みになりました。1104号機と2段積みロンチキの組み合わせを撮ったのはこれが最初で最後だったと思います。
この月も田端PFに廃車が発生しており、11月5日にEF65 1107が、26日に「スーパーエクスプレスレインボー」塗装を纏っていたEF65 1118がそれぞれ長野車両センターへと旅立っています。これで田端運転所のEF65は5機となり、この体制は1104号機が廃車となる2021年8月までの約6年間続くことになります。
2015.12.15 工9866 伊東工臨返空(浜北=20) EF65 1104+ロンチキB編成10車 北府中
話を戻しまして、12月15日の伊東工臨返空。意外にも東海道方面のロンチキで撮る機会の少なかった1104号機、これが初撮影となりました。ここは10車だと収まりがいいですね。
2016.2.10 工9865 品川工臨 EF65 1104+チチキ5車 新小岩信
2016年に入りまして、2月10日の品川工臨。E235系の東海道線試運転の帰りがけに撮ったものです。到着したらもう前照灯が点いていたので、撮って即撤収した記憶があります。
2016.2.19 工9869 新鶴見工臨(八南=15) EF65 1104+ロンチキA編成13車 南流山
続いて2月19日の新鶴見工臨。武蔵野線のどこかが現場だったと思います。幾度となく通った南流山、よくまあ飽きなかったなと思います。
2016.3.7 工9863 高崎工臨(高南=5) EF65 1104+ロンチキB編成13車 金町
ロンチキ発送が続きます。3月7日の高崎工臨。この日はデビュー初日(2015年11月30日)にトラブル続出で運転打ち切りとなった山手線E235系が再デビューした日だったと思います。
2016.3.14 工9562 大宮操工臨返空 EF65 1104+チチキ10車 東浦和
そのちょうど1週間後の大宮操工臨返空。機関車の次位がチチキチ×2というちょっと面白い編成でした。
2016.5.24 工9865 品川工臨(大北=2) EF65 1104+ロンチキC編成13車 金町
続いて5月24日の品川工臨。黄色い緊締装置が特徴のC編成、やはり13車連なると美しいですね。暗いけど。
2016.5.30 単9495 EF65 1104 南千住
約1週間後の5月30日。この日は新小岩信号所への単機回送から撮影していました。E657系の集約臨が運転されており、いつもより10分ほど遅くやって来ました。
2016.5.30 工9565 宇都宮タ工臨 EF65 1104+チチキ11車 金町
本題の宇都宮タ工臨はこんな感じでした。被った電車が今は亡き6000系というのがなんとも…。
2016.7.26 工9871 八王子工臨 EF65 1104+チキ12車 新秋津
続いて7月29日の八王子工臨。オール2段積みなのもさることながら、レールが雨に濡れていていい感じです。
2016.7.29 工9391 新宿工臨 EF65 1104+チキ2車 南流山
その3日後の新宿工臨。南流山でチキ2車を撮ったのはこの日が初めてだったのですが、撮りづらさに絶望した記憶があります。
2016.8.2 工9866 伊東工臨返空(浜南=10) EF65 1104+ロンチキB編成10車 西国分寺
さらに4日後の伊東工臨返空。北府中工臨を撮って急いで駅に戻って…、って感じの流れだったと思います。
2016.8.4 工9587 北府中工臨返空 EF65 1104+チキ4車 新秋津
さらに2日後には北府中工臨の返空でも撮影しています。直前まで中線をマト17編成の長野出場が塞いでいてヒヤヒヤものでした。
2016.10.1 工9563 高崎操工臨 EF65 1104+チキ4車 大宮操~大宮
続いて10月1日の高崎操工臨。この日は高崎で5年ぶりのSL重連が運転されており、まさに裏番組と呼ぶに相応しい列車でした。当時は「SLに目もくれず工臨撮ってる俺カッケー」とか思っていたのかもしれないですけど、今になって思うと普通にSL撮りに行けよって感じですよね。夜汽車だったし。
2016.10.25 工9563 高崎操工臨 EF65 1104+チキ4車 東浦和
その約3週間後に牽引機もエンドも貨車の形式もレールの載り具合も行き先も、挙句の果てに天気までも同じような工臨が運転されました。だからSL撮りに行けと…。ちなみに内訳だけは違います(10/1…岩船×2・10/25…駒形×2)。
2016.11.28 工9869 八王子工臨(東北=13) EF65 1104+ロンチキB編成10車 新小岩信
そして11月28日の八王子工臨。これが2016年ラストの撮影となりました。新宿経由の八王子ロング。一度は新宿で撮ってみたいなあ…、という願いは約半年後に立て続けに叶うわけですが…。
この時は新小岩信号所で発車を見送りました。
前編は以上になります。後編では2017年から現在までの記録を振り返っていきます。