れーるノート

首都圏のレール輸送といずっぱこ

2022/11/21 リニア・鉄道館 Part1

前回の記事の続きです。

 


 

金山駅前のホテルで1泊しまして、翌21日。

 

ホテルの窓から名古屋の街並みを。気持ちのいい朝を迎えました。

 

準備を整えて中央線で名古屋駅まで移動。名古屋名物モーニングを堪能しまして、名古屋駅を一気に横断。あおなみ線に飛び乗ります。

 

イメージカラーの「あお」、名古屋の「な」、港の「み」をとって命名された「あおなみ線」。もともとは東海道本線の貨物支線(通称「西名古屋港線」)だったものを複線・高架化した上で客貨共用路線とし、2004年10月より旅客営業を開始しています。

 

もちろん初めての乗車だったのですが、名古屋貨物ターミナルの脇を通過したり、ダイナミックなカーブ区間があったりと、なかなか楽しい路線でした。

 

そんなあおなみ線に揺られること約24分、終点の金城ふ頭駅に到着です。なんだか京葉線にありそうな外観です。この金城ふ頭に居住者は一切いないそうで、改札を出て右に進むと名古屋市国際展示場レゴランド、左に進むとリニア・鉄道館…、といった感じの駅になっています。

 

この日は大半の家族連れが改札を出て右折していきましたが、我々は迷うことなく左折。あおなみ線の高架線を横目に少し歩くと…、

 

右手に大きな建物が見えてきます。

 

初訪問の「リニア・鉄道館」、JR東海鉄道博物館です。奥に見えるのは金城ふ頭と潮見ふ頭を結ぶ名港中央大橋。この外観すら一見の価値があります。晴れてよかった。

 

エントランスホールで入館券を買いまして、いざ入館。

 

エントランスを抜けて最初に現れるのは【シンボル展示エリア】。世界最速を記録した3つの車両をシンボルとして展示しています。

 

左からC62形蒸気機関車、955形新幹線試験電車「300X」、超電導リニアMLX01-1の順。1両ずつ見ていきましょう。

 

まずはC62形蒸気機関車17号機。1948年から1949年にかけて製造された国鉄最大の蒸気機関車です。

 

C62形は全5機が保存されています。京都鉄道博物館に1・2・26号機、JR北海道苗穂工場に3号機、そしてこのリニア・鉄道館に17号機がいるわけですが、中でもこの17号機はC62形の中でも特別な存在となっています。

 

1954年に行われた試験の際に東海道本線木曽川橋梁上にて129km/hを記録。これは狭軌鉄道の蒸気機関車における最速記録です。これこそ17号機が特別な存在たる所以、このC62 17こそが日本の蒸機最速のランナーです。

 

高速運転を実現した巨大な動輪。間近で見るととんでもない迫力です。

 

かつて牽引していた東海道本線の名門特急「つばめ」のヘッドマークも誇らしげに、東海道の要衝 名古屋の地でその偉大な功績を後世に伝えています。

 

 

続いては955形新幹線試験電車、通称「300X」です。「のぞみ」の270km/h営業運転を実現した東海道新幹線の3代目 300系に続く新たな新幹線車両技術の研究のため、1994年に製造されました。旅客営業を一切考慮していない、JR東海の新幹線車両で唯一の完全な試験車となっています(今でこそN700系Sの確認試験車がいますが…)。

 

編成の両端で先頭形状が異なっており、このリニア・鉄道館に保存されているのは「ラウンドウェッジ型」と呼ばれる形状の東京方制御電動車955-6です。

 

もう一方の先頭車は「カスプ型」と呼ばれる形状の955-1で、こちらは滋賀県米原市にある鉄道総合技術研究所風洞技術センターにて保存されています。

 

300系量産試作車の登場が1990年で、営業運転の開始が1992年。その2年後には次世代を見据えた試験車が登場していたというわけです。JR東海高速鉄道システムに対する猛烈な探求心が伺えます。

 

この955形新幹線試験電車は1996年7月26日に東海道新幹線京都~米原間にて国内の新幹線車両最速となる443km/hを記録。世界的に見てもフランスTGV、中国CRHに次ぐ凄まじい記録となっています。

 

300Xの試験の結果は700系へと継承され、東海道新幹線の進化に大いに貢献しました。

 

 

そして一番右に佇む超電導リニアMLX01。個人的に「リニア」と言われるとこの顔が真っ先に思い浮かびます。1996年に製造され、2003年には当時の磁気浮上式車両における世界最速記録である581km/を記録したとんでもない車両です。そしてこの記録を2015年に塗り替えたのが同じく日本の超電導リニアL0系。こちらは603km/hを記録しています。驚異的というほかありません。

 

このMLX01も編成両端で先頭形状が異なっており、リニア・鉄道館に保存されているものは「ダブルカプス型」と呼ばれる形状のMLX01-1です。山梨リニア実験線甲府方先頭車として数々の試験に使用されました。

 

相方の東京方先頭車MLX01-2は「エアロウェッジ型」と呼ばれる先頭形状で、こちらは山梨県立リニア見学センターに保存されています。

 

初期のMLX01の特徴である上下開閉のドアもしっかりと開いた状態で展示してあります。このMLX01と、過去の試験車たちの試験結果をもとに営業運転を見据えた新型車両L0系が誕生し、現在に至るというわけです。

 

MLX01-1は車内も公開されています。通路確保のためか、片側の座席は全て撤去されていますが、実際は2列×2列の構造だったようです。

 

高速鉄道システムの未来を切り拓いた2つの車両。まさにリニア・鉄道館の「シンボル」に相応しい車両です。

 

 

さて、この【シンボル展示エリア】を抜けると、広大な【車両展示エリア】が姿を現します。

 

中でも圧巻なのはこの東海道新幹線歴代車両の4並び。700系と300系を展示している博物館はこのリニア・鉄道館のみです。

 

上からも1枚。「リニア・鉄道館」と言われたらこのアングルが思い浮かびます。

 

ということで右から1両ずつ見ていきましょう。

 

 

まずは「夢の超特急」0系。国内外に多くの保存車が存在していますが、このリニア・鉄道館では4両の0系が保存されています。こちらは1971年に製造された0系21形86号車、こだま用編成の博多方先頭車として活躍した車両です。

 

先頭車以外にもグリーン車0系16形2034号車、食堂車0系36形84号車、2代目ビュッフェ車0系37形2523号車が保存されています。初代ビュッフェ車である0系35形が京都鉄道博物館に保存されているので、違いを見てみるのも面白いかもしれません(もっとも0系37形2523号車は普段は連結面しか見ることができませんが…)。

 

 

そんな0系の隣に佇むのが東海道・山陽新幹線の2代目車両 100系です。

 

0系と比べると保存車両がさほど多くない100系。博物館の展示車両として保存されているものはリニア・鉄道館の2両と京都鉄道博物館の1両のみとなっています。また、0系をはじめとする歴代車両と並んで展示される姿はこのリニア・鉄道館でしか見ることができません。

 

そしてこの100系123形1号車は100系量産車のトップナンバー。X2編成の博多方先頭車として活躍した、たいへんに貴重な車両です。

 

先頭車だけでもたいへんに貴重なのですが、このリニア・鉄道館のすごいところはダブルデッカーの0系168形までも保有しているということ。国内に現存する100系の二階建て車両はこのリニア・鉄道館の100系168形9001号車とJR西日本博多総合車両所100系168形3009号車、100系179形3009号車の3両のみとなっています。

 

つまり、博物館の展示車両として保存されているものは世界でこの1両のみとなっています。加えてこの車両は試作編成のX0編成(のちにX1編成)に組み込まれていた、これまたとてつもなく貴重な車両となっています。

 

ありがたいことに車内も公開されていまして、客席部分には立ち入れないものの、通路から中の様子を眺めることができます。

 

当時のメニューを再現したものも掲出されていました。「食堂車」と言われるとなんとなく洋食をイメージしますが、和風御膳やうなぎの蒲焼きなんてものもあったんですね…。所要時間の短縮と共に姿を消していった新幹線の食堂車。二階からの景色を眺めながら食事を楽しむことができた、夢のような時代があったのですね。

 

 

さて、続いては300系。1990年から1998年にかけて製造されて2012年まで活躍した、東海道新幹線の3代目車両です。「のぞみ」の270km/hを実現した、東海道新幹線高速化の偉大な立役者ですが、保存車両は極めて少なく、このリニア・鉄道館以外ではJR東海の子会社である清掃業者が訓練用に保有しているのみとなっています。

 

この300系322形9001号車は300系の試作車J0編成(のちにJ1編成)の東京方先頭車。前面ガラスや前照灯のガラスの形状が異なるほか、前面台車付近が膨らんだ独特の形状となっており、前面だけ見ても量産車とはかなり違った印象を受けます。

 

かつては300系322形9001号車の隣に量産車の300系323形20号車が展示されており、量産先行車と量産車の違いを一目で見ることができたのですが、2014年に後述する700系723形9001号車に展示場所を譲る形となり、最終的には浜松工場にて解体されたとのことです。博物館という限られたスペース内での展示、時には犠牲となるものが出てしまうのは仕方がないことだと思います。

 

さて、そんな300系323形20号車のスペースに展示されることとなった700系723形9001号車。試作編成C0編成(のちにC1編成)の博多方先頭車です。700系の保存車両は世界にこの1両のみとなっています。

 

1997年から2006年にかけて製造された700系。過去の車両たちが高速化を追求してきた一方で、この700系ではコストダウン・省エネルギーを重視し、JR東海JR西日本の共同開発という形で誕生しました。700系量産先行車登場の1年前にJR西日本山陽新幹線300km/h運転を実現させた500系の量産先行車を世に送り出していたこともあり、速度面でのインパクトはありませんが、非常に高いポテンシャルを持った車両として東海道・山陽新幹線の新しいスタンダードになりました。

 

余談ですが、東の新幹線が早々にLED表示器を導入した一方で、東海道新幹線は700系まで行先方向幕が使用されていました。東海道新幹線と言えばこの表示ですよね。

 

 

ところで、最初に「東海道新幹線歴代車両の4並び」と書きましたが…、

 

実はもう1両いるんです。

 

N700系試作車X0編成です。2019年より新たにリニア・鉄道館の展示車両となったN700系。先頭車783形9001号車、普通車786形9201号車、グリーン車775形9001号車の計3両が展示されています。JR東日本鉄道博物館での展示用にE5系を1両新造しましたが、こちらは2005年から2019年にかけて実際に使用されていた車両です。

 

試作車だから廃車が早かったのかと思いきや、初期のN700系も普通に廃車が出ているという…。東海道新幹線の車両更新の早さにはただただ驚くばかりです。

 

N700系は屋外ということでなかなか1枚の写真に収めるのは難しいですが、東海道新幹線の歴代5形式がしっかりと並んでいます。さすがはJR東海鉄道博物館、新幹線に関する展示のクオリティは圧巻です。

 

 

ちなみに、新幹線電気軌道総合試験車922形26号車も展示されています。幸せの黄色い新幹線「ドクターイエロー」の1世代前の車両です。なんと車内も公開されていまして、シートに座りながら保守作業の映像を観ることができます。

 


 

ということで、今回は【シンボル展示エリア】と【車両展示エリア】の新幹線車両をご紹介しました。次回は【車両展示エリア】の貴重な車両たちのご紹介です。

 

Part2につづく。