れーるノート

首都圏のレール輸送といずっぱこ

2022/11/21 リニア・鉄道館 Part2

Part1の続きです。

 


 

続いては新幹線車両以外の展示車両のご紹介です。

 

まずはED11形電気機関車から。聞いたこともないような形式です。国鉄よりもさらに前、鉄道省時代にアメリカから輸入された機関車だそうで、1号機と2号機の2機しか存在しません。製造は1922年、今年でちょうど100歳ですね。

 

リニア・鉄道館に展示されているのは2号機。1923年に東海道本線電化用に輸入され、本線上で活躍したのち浜松工場の入換機となり、1976年頃まで活躍していたとのこと。その後、リニア・鉄道館の前身とも言える佐久間レールパークにて保存され、最終的にこのリニア・鉄道館にやって来たというわけです。

 

で、片割れの1号機はどうなったのかというと、こちらは西武鉄道に譲渡されて貨物列車の牽引に使用されていたとのこと。形式こそE61形に変わりましたが、現在も横瀬車両基地で保存されており、イベントの際にお目にかかることができるようです。

 

 

そんなED11の後ろに展示されているのがED18形電気機関車。製造は1923年ですが、イギリスから輸入されたED50形をED17形に改造し、ED18形に再度改造して今に至るというとんでもない経歴を持っています。

 

1955年のED18形改造後は飯田線の貨物列車牽引に使用され、1976年頃まで活躍。本線撤退後は前述のED11 2を置き換える形で浜松工場の入換に従事し、ED62 14の入換機転用をもって一度車両としての役目を終えます。

 

その後は浜松工場で長い眠りについていたのですが、1992年に飯田線のイベント列車「トロッコファミリー号」の牽引機として白羽の矢が立ち、再び本線上に戻ることとなります。結局2005年頃まで活躍し、最終的にこのリニア・鉄道館の保存車両になりました。JR6社の中で真っ先に機関車の全廃に踏み切ったJR東海ですが、こんなにもレトロな機関車をイベント用に復活させてしまうような時代もあったのですね…。

 

ちなみに改造元となったED17形は大宮の鉄道博物館に保存されていたりします。

 

 

ED18の後ろには車両展示エリア唯一の蒸気機関車、C57 139が鎮座しています。たいへんに多くの保存機がいるC57形蒸気機関車、なんだったら動態保存機としてバリバリ現役の車両もいるわけですが、この139号機はお召列車の先頭にも立った名古屋機関区のエース的存在だったようです。

 

車両展示エリアの「蒸気機関車」はこの139号機のみですが…、

 

その後ろに「蒸気動車」ホジ6005形がいます。まず蒸気動車というものの存在すら知らなかったのですが、要するに蒸気機関車の走行機能を備えた客車とのこと。SL銀河の客車もビックリの元祖自走式客車です。

 

製造は1913年、ホジ6014として誕生しました。あまり聞き慣れない「ジ」の記号は自働の頭文字から来ており、汽動車を表すものとして使用されていたようです。閑散線区の小規模輸送に従事したのちに名古屋鉄道に譲渡、その後国鉄に返還され、「鉄道記念物」に指定されました。

 

そして2019年7月23日、遂に重要文化財に指定。貴重な車両であることはもちろん、保存状態の良さも決め手となったようです。

 

立ち入れるのは扉の周辺のみですが、車内も公開されています。吊り革がちゃんと吊り「革」ですね。

 

 

車窓から見える客車は国鉄標準型の3等客車スハ43、その前には「イゴナナ」ことEF58 157が連結されています。名門EF58一族の中でJRに継承(JR化後に車籍復活)された数少ない機関車です。その前には鉄道省時代の木製電車 モハ1形も展示されています。

 

 

その隣の列にはクモハ52004。なんとなく私鉄チックと言いますか、角ばった車両が多い鉄道省国鉄時代の電車の中で一線を画すデザインとなっています。このモハ52004は1937年に製造されたいわゆる第2次車で、流線形の車体から「流電」の愛称で親しまれていたそうです。

 

もともとは京阪神地区の急行列車に使用することを目的に製造された車両ですが、晩年は飯田線で活躍した実績があり、現在このリニア・鉄道館に保存されているというわけです。保存に際して製造時の姿に復元されたとのことですが、とても鉄道省時代の車両とは思えぬほどに古臭さを感じさせないデザインです。

 

 

クモハ52004の後ろに連結されているのはクモハ12041。形式としてはクモハ12形になるわけですが、このクモハ12041はもともと事業用車であったクモヤ22形をイベント列車用に改造したという、なかなかに変態的な経歴を持っています。主に飯田線で使用されていたそうで、その縁もあってか現在はリニア・鉄道館に収容されたようです。

 

クモハ12041と向い合せになっているのがクハ111-1。国鉄近郊形電車の代表格113系一族のトップナンバーです。ようやく見覚えのある顔が出てきました。113系の登場に先立って大船電車区と静岡運転区に投入された111系。【東京】の幕が泣かせます。

 

サボも【静岡⇔東京】になっています。

 

車内も公開されていました。このあたりになってくるとようやく「懐かしい」って感情が出てきますね。もっとも113系に乗った記憶はほとんどないですが…。

 

 

そして車両展示エリアのセンター(?)に堂々と佇むのがこの車両。

 

国鉄初の振子式車両 クハ381-1です。今でも伯備線の特急「やくも」で活躍している381系ですが、最初に投入されたのは中央本線の特急「しなの」でした。

 

曲線区間の多い線区でのスピードアップは単純に出力を上げるだけではどうにもならない部分があり、曲線区間をいかに速く駆け抜けるかという発想から振子式車両が誕生しました。今日でも多くの車両で採用されており、そのパイオニアである381系は日本の特急列車のスピードアップの立役者と言っていいでしょう。

 

ちなみにこのリニア・鉄道館にはクハ381-1のほか、のちに登場したパノラマグリーン車クロ381-11も展示されていたのですが、N700系の展示開始で屋外から屋内にやって来た117系の玉突きで2019年6月7日に展示を終了。移設や譲渡されることもなく、そのまま解体となってしまったようです。Part1でも書きましたが、博物館という場所はスペースが無限にあるわけではないですから、時には展示終了という判断も必要になってくるのでしょうね…。

 

 

そんなクハ381-1の後ろにはキハ181-1の姿が。晩年はJR四国で活躍していたこともありヘッドマークが【しおかぜ】になっていますが、このキハ181系も初投入されたのは中央本線の特急「しなの」でした。大出力エンジンが最大の特徴で、速度面ではなく圧倒的な加速性能でスピードアップを実現しました。

 

 

さて、これだけでもかなり充実している【車両展示エリア】ですが、最奥部にはさらに大量の車両が並んでいます。

 

 

圧巻です。中間車両や客車は妻面しか見えませんが、たまに車内公開なんかもやっているようです。

 

急行型の代表格165系(クモハ165-108)と、N700系に追われてこの場所にやって来た117系(クハ117-30)。このクハ117-30の位置にクロ381-11が展示されていたようです。

 

ちなみに117系自体も屋外で展示されていた頃はクハ-モハ-クハの3両編成だったのですが、モハ117-59とクハ116-209は解体となってしまったようです。

 

そして目を引くのがサロ165形(サロ165-106)。入換用の中間運転台が付いています。こういうのマジでたまらんですよね。貫通扉が開いているので辛うじて中の様子を見ることもできます。

 

そしてキハ82-73。故障の続発していたキハ81形を改良する形で誕生した、キハ80形一族の救世主的存在です。

 

先頭部のデザイン性が高く評価されており、その洗練された前面形状は後発のキハ181系のほか、JR世代のキハ189系373系にも影響を与えたと言われています。

 

ヘッドマーク紀勢本線の特急【南紀】。車両こそキハ85系に変わりましたが、ヘッドマークのデザインは現在も継承されています。

 

7月から8月にかけて京都鉄道博物館で展示されて話題を呼んだ「花魁車」ことオヤ31形建築限界測定車(オヤ31 12)の姿もあります。リニア・鉄道館では矢羽根を広げた状態で常設展示されています。

早々に本線上から退いたオヤ31 12とは対照的に京都鉄道博物館に展示されたオヤ31 31は今日まで車籍が残っており、その処遇が注目されていましたが、2022年12月6日付のJR西日本プレスリリースでえちごトキめき鉄道への譲渡が発表され、たいへんな話題を呼びました。どのような形での保存になるのかはわかりませんが、とりあえず解体は免れて一安心といったところでしょうか。

 


 

以上、【車両展示エリア】のご紹介でした。次回はその他の展示と、博物館を出てからのお話になります。

 

Part3につづく。