れーるノート

首都圏のレール輸送といずっぱこ

2023/3/25 『初公開!レール運搬事業用車撮影会in越中島基地』昼の部

長らく撮り鉄をやっている中で、どうしても叶えてみたい夢がありました。「越中島貨物駅(東京レールセンター)に入ること」です。「入る」といっても忍び込んでやろうとかそういうわけではなく、何らかの機会に合法的に(公式に)入れればな…、という、漠然とした夢でした。

 

そんな夢があっさりと叶うことになったのです。いや、あっさりとではなかったかもしれません。今回はそんなお話を長々と書いていきます。

 


 

事の発端は10年の付き合いになる知人からのLINEでした。

 

越中島で撮影会あるらしいじゃん」

 

いやそんなはずはないと。確かに新型コロナウイルス感染症の影響でこれまで無料で行われてきた車両基地等でのイベントは軒並み定員制の有料イベントに姿を変え、その中には思わず唸ってしまうマニアックな撮影会もありました。過去には国分寺駅に隣接した保線基地を使用してキヤE195系の撮影会が行われたこともあり、この流れで越中島貨物駅でも撮影会やってくれないかなー、と常日頃から思ってはいましたが、越中島貨物駅は旅客駅から遠く離れた施設であって、撮影会とかそういう類のイベントはやらないんだろうなー、と半ば諦めていた部分もありました。

 

そんな中での知人からの一報。どうやら発足直後に様子見で入った「撮り鉄コミュニティ」に書いてあるとのこと。久々にログインしてみると、確かにそこには『初公開!レール運搬事業用車撮影会in越中島基地』の文字がありました。

 

待ちに待って、待ち過ぎて半ば諦めかけていたイベントが開催されようとしている、これはもう行くしかないと。しかしそこに明確な発売開始日は記載されていません。人気のあるイベントであれば発売開始から数分で売り切れることもあります。1分もせずに完売するイベントも見てきました。一気に不安が過ります。しかし、こればっかりはどうすることもできないので、この日からJRE MALLの販売ページにアクセスしまくる日々が始まりました。

 

もう何十回アクセスしたかわかりませんが、その苦労(?)の甲斐もあって無事に購入することができました…、が、1つ誤算がありました。購入ページをよく読むと(昼の部)と記載されていたのです。ってことは…?と思いもう一度JRE MALLの販売ページに戻ってみると、そこには(夕方の部)の文字が。まさかの2部開催、最初はまあ片方行ければいいか、行きたい人たくさんいるだろうしすぐに完売するだろう…、と思っていたのですがなかなか完売する気配がなく、一生に一度の機会かもしれないし…、と考えているうちに気付いたら夕方の部も購入していました。合計41,450円、これで越中島貨物駅に140分間も立ち入れると思うと安いものです。

 

これで一安心、と思ったのも束の間で、購入ページを読み進めていくと「雨天中止」の文字が目に飛び込んできます。ここからは天気予報に一喜一憂する日々が始まりました。2週間予報での最初の発表は 晴/雨 。まあ2週間後の予報だしすぐ変わるでしょ…、と楽観視していたものの、一向に雨マークがとれる気配がありません。どんどん近付いてくる開催日、一時は雨90%という絶望的な予報を叩き出されたこともありました。

 

状況が一変したのは開催2日前の23日。これまで頑なに雨予報を出し続けてきた複数の予報サイトの予報が曇りに変わったのです。開催の可否が判断されるのは前日14時。このまま持ちこたえてくれと祈りつつ迎えた24日の14時。小雨の予報に変わりましたが、無事に開催が決定となったのです。

 

JRE MALLと天気予報に翻弄された、長い長い3週間でした。当日は小雨程度で、撮影会の時間帯は雨が上がるような予報も出ています。胸を撫で下ろし、当日の朝を迎えました。

 


 

「土砂降りじゃねーか!!!」

 

窓の外を見て思わず叫びそうになりました。当日はまさかの土砂降り。撮影会の時間には止むだろうと思っていたものの一向に弱まる気配がなく、とうとう出発の時間を迎えてしまいます。

 

雨であっても開催さえされれば御の字と言いたいところですが、撮影会中は傘の使用ができないということで、レインカバーは買ったものの機材の故障のリスクも十分にあるほか、レンズの交換にも時間と手間がかかってしまい、貴重な撮影時間をロスしてしまう可能性もあります。なんとも複雑な気分で東京駅へ向かっていたのですが、この撮影会の一報をくれた知人からLINEが来て、東京駅で一緒に昼飯を食べることに。そこで色々と話をしているうちに「もう行くしかねえ!」と覚悟が決まりました。唯一無二の知人に見送られ、京葉地下ホームへの長いエスカレーターを下っていきました。

 

東京駅を出て2駅、越中島駅を出発したところでいつものように進行左側のドア付近に立ち、越中島貨物駅の様子を伺います。整然と並べられたモーターカーとキヤE195系、この時ばかりは天候のことなど忘れて、撮影会への期待が一気に高まります。

 


 

程なくして潮見駅に到着。受付開始まで時間があったので、歩いてしおかぜ橋へ向かいました。

 

一向に弱まる気配のない雨。もしかして中止になるんじゃ…、という不安を覚えながら構内を眺めていると…、

 

係員の方々が出てきて、通路にコーンが設置されました。やると言ったからにはやるようです。数枚シャッターを切って越中島貨物駅の入口を目指します。

 

深川車両基地を横目にしばらく歩いていると、先ほどまで土砂降りだった雨が弱まっていることに気付きます。最初は気のせいだと思っていたのですが、確かに弱まってきているのです。絶望的な予報を叩き出していた雨雲レーダーもいつの間にか雨雲が途切れる予報に変わっています。そして、越中島貨物駅の入口に着く頃には傘なしでも歩ける程にまで雨は弱まりました。懸念は全て吹き飛びました。あとは撮影会を存分に楽しむのみです。

 

こうして越中島貨物駅での初イベント『初公開!レール運搬事業用車撮影会in越中島基地』が幕を開けたのです。

 


 

越中島貨物駅の入口は潮見駅から運河を挟んだ反対側、新砂踏切の横にあります。係員の方にイベント参加者である旨を伝え、普段は立ち入ることのできない線路脇の道を進んでいきます。しばらく線路沿いに歩くと曙北運河を渡った先に構内踏切があり、この踏切を渡った先が受付場所となっていました。

 

受付を済ませ、ヘルメットとチョッキを受け取ります。振り返るとそこには通称「イグアナクレーン」が聳え立っており、その足元にはチキが留置されています。この時点で既に泣きそうになっていました。程なくして集合時間になり、撮影会会場へと移動します。

 

縦に長い越中島貨物駅。溶接作業場や長尺レール積込用の門型クレーンを横目に構内をしばらく歩き、引上線の手前で左折。少し進んだところにテントがあり、ここで撮影会の説明がありました。

 

今回の撮影会は構内南側の4線、ロープで囲われたエリアが撮影可能エリアでその中であれば自由に撮影してOK。車両に触れたり間に入ったりしなければ近付いての撮影も可能で、写真に写り込まないよう車両の周辺にはロープを設置していないとのことでした。また、途中で実演等も予定しており、時間帯によって撮影エリアを区切るとの案内もありました。手厚い配慮に涙しつつ、いよいよ撮影会のスタートです。

 

まずはこの撮影会のメインと銘打たれた3並び。右からキヤE195系LT-1編成、キヤE195系ST-1編成、TMC400A 30+チキ6車です。最初はエンジンの切られた状態で、順番にエンジン始動および前照灯点灯の実演が行われました。この実演中は車両からやや離れた場所にロープが置かれており、そのロープまでが撮影可能エリアとなっていました。

 

順番にエンジンが始動し、前照灯が点灯。キヤE195系の作業灯、さらには保守用車標識灯も点灯しました。この時点で既に41,450円の元は取りました。

 

横からも1枚。23日に暁橋から眺めた光景が目の前に広がっています。言葉になりません。

 

歴史的な3並び、右から1つずつ見ていきましょう。

 

まずキヤE195系LT-1編成。新製から早5年、キヤE195系の歴史と共に歩んできた量産先行車です。何度もこの越中島貨物駅で撮影した編成ですが、遂に構内で撮影することができました。後ろに写るイグアナクレーンが涙ものです。

 

反対側からも1枚。いつも積卸作業場を撮影するために訪れている潮風の散歩道が見えました。いつもあそこから構内を眺めていたんだなあ…、と思うと何とも感慨深いものがあります。

 

正面からも。バリアングルのありがたみを痛感しつつ。

 

程なくして車両の手前のロープが外され、車両に近寄っての撮影も可能になりました。撮影会では定番の見上げアングル、ロンキヤでやると結構不気味です…。

 

そんなLT-1編成の隣に鎮座するのは…、

 

走る国宝、キヤE195系ST-1編成です。

 

LT-1編成登場の約2ヶ月後に登場したST-1編成。こちらもキヤE195系の歴史を創り上げてきた偉大なる量産先行車です。昨年12月19日に郡山総合車両センターに入場、今年2月16日に一旦出場したものの5日後の2月21日に再び郡山へ入場。撮影会には出られないかな…、と思っていましたが、3月15日に無事出場。撮影会3日前の3月22日に越中島貨物駅に送り込まれ、歴史的な3並びのセンターに大抜擢となりました。全人類が納得の采配です。

 

こちらも正面から。あまりのかっこよさに涙を堪えながらの撮影となりました。

 

販売ページには「キヤE195系定尺輸送編成(6両)」と記載されており、予告通り3編成が併結された状態での展示となりました。後ろはST-13編成とST-14編成、3月22日と17日にそれぞれ送り込まれた編成です。やはり複数編成が繋がっている方が見栄えがいいですね。3並びの真ん中なら1編成でもいいんじゃ…?と一瞬でも思った自分の未熟さを恥じた瞬間でした。出直して参ります。

 

たいへんに畏れ多いのですが、ST-1編成も至近距離で撮影させていただきました。一生見ていられます。

 

そして3並びの左側。

 

TMC400A 30とチキが連結されて展示されています。チキは前から7074・7079・7032・7082・7123・7129の順。2021年から2022年初頭にかけて越中島貨物駅に転属してきたチキ7000形6両が全て連結されました。販売ページには「保守用車(軌道モーターカー:黄色)+チキ車(4両)」と記載されていましたが、チキが予定より2両増えたようです。こんなん長ければ長いほどいいですからね。形式が揃っていることもあって見栄えも最強です。

 

そんなチキ7000形の先頭に立ったTMC400A 30。現在越中島貨物駅は3両のTMC400Aが稼働していますが、その中でも一番早く越中島にやって来たのがこの30号機です。「カエル君」の愛称でごく一部の界隈から人気だったTMC400Bの代わりとして2019年頃に川崎貨物駅からやって来ました。転入からしばらくは稼働しているところを見かける機会が少なかったものの、現在は後に転入してきた2両のTMC400Aと共に越中島貨物駅の主力として活躍しています。

 

 

さて、この3並びだけでももう41,450円の元が取れているどころかさらに4万円払ってもいいレベルですが、ありがたいことにこの他にも展示車両が多数揃えられていました。

 

1列に並べられた4両のモーターカー。さながらMC博物館のようです。

 

まずは東鉄工業カラーのTMC400A 55。2021年3月頃に越中島貨物駅にやって来ました。転入直後は側面に「TOTETSU」の文字とロゴマークが描かれていたのですが、現在は「上野保線技術センター」の文字のみになっています。

 

そしてユニオンカラーのTMC400A 57。こちらも2021年3月頃に越中島貨物駅にやって来ました。床下がグレーに塗られているのが特徴的です。かつては花の絵柄やユニオン建設のロゴマークが入っていたようなのですが、確か越中島貨物駅に転入してきた時点で既にこの装いになっていたと記憶しています。

 

販売ページに記載されていた展示内容はここまでだったのですが…、

 

サプライズでTMC500W 307+TMC500W 308+チキ2車も展示されました。3月半ば頃に積込線に出てきていたのでもしかして…?とは思っていたのですが、京葉線の車内からこれが見えた時はガチ泣き寸前でした。

 

長らく越中島貨物駅の入換業務を担ってきた2両のTMC500W。犬の顔が描かれた塗装が特徴的で、「越中島のイヌ」としてレール輸送ファン以外からも人気を博しているモーターカーです。

 

TMC500の中で唯一重連総括に対応しているのがこのTMC500Wで、ロンチキを重連で牽引・推進する姿は圧巻でした。

 

後ろのチキは6101・6102のユニット。今年1月に全検を終えたばかりで、まだまだ綺麗な状態でした。

 

バリアングルを駆使して色々なアングルで撮りまくり。チラっと写り込むクレーン操作室も涙ものです。

 

被写体もさることながら、後ろに写り込む設備が越中島貨物駅にいることを実感させてくれます。

 

幾度となく通っているしおかぜ橋も構内から見ることができました。ここからだと結構距離あるんですね…。

 

さて、撮影会も中盤。3並びの手前に再びロープが置かれ、LT-1編成のエプロン動作実演が始まりました。

 

 

前面扉の前のライトが点灯し、エプロンが片側ずつ下がります。

両側のエプロンが下がりました。構造を見ている限りだと4本同時の取卸しはできなさそうなので、これはかなり貴重な姿です。

 

しばらくこの状態のままだったので正面からも。前照灯+エプロン降下という姿も現場ではまずあり得ないので、これもまた貴重な光景です。

 

両側のエプロンを同時に上下する実演も行われました。2021年4月の取手工臨以来、久々にエプロンの動作シーンを見ることができました。

 

 

そして撮影会の終盤、最後にビッグイベントが待ち構えていました。

 

 

 

TMC500W 37にヘッドマークが掲出されました。

 

実は事前に社員の方から説明があり、このTMC500Wは3月をもって引退するとのことで、引退前の花道として今回の展示が実現したそうです。廃車が目前に迫っているため軽油は全て抜かれており前照灯はつけられないとのことですが、ヘッドマーク掲出というサプライズが用意されました。

 

首都圏のレール輸送を陰ながら支えてきた2両のモーターカー、最初で最後のお披露目です。

 

ヘッドマークはこのようなデザイン。よく見ると保守用車標識灯も点灯しているという芸の細かさ。

 

LT-1・ST-1・TMC400A 30との並びも撮影できました。越中島貨物駅のモーターカーもこれにて世代交代です。

 

最後に3並びをもう一度。今度は望遠で狙ってみました。

 

キヤE195系の運用開始に大きく貢献した量産先行車2編成の並び。越中島貨物駅での初イベントに相応しい顔ぶれだったなと思います。

 

こうして70分間の撮影時間があっという間に終了。機材を片付け、受付場所へと戻ります。ヘルメットとチョッキを返却し、お土産を受け取って解散となりました。

 

夢のような時間だったな…、と余韻に浸る間もなく、今度は夕方の部に突入です。

 

次の記事へつづく。